Sound City Studioを使ったミックスのやり方|オフマイクとパラレル処理

プロ志向のミキシング

ミックスをしていると、「音はきれいに整理されているのに、なぜか打ち込みっぽく聴こえる」「各楽器がバラバラに鳴っていて、バンド全体の一体感が出ない」と感じることがあります。

こうした問題を改善する方法の一つが、実際のレコーディングスタジオで行われている「オフマイク」の考え方をミックスに取り入れることです。

UAD Sound City Studioのようなスタジオシミュレーション系プラグインを使えば、ドライなドラム音源に部屋の響きを加え、実際にスタジオで録音したような空気感を作ることができます。

さらに、オフマイクの音をパラレル処理で加えることで、元の音の輪郭を維持したまま、音の厚みや密度を高めることも可能です。

この記事では、Sound City Studioを例に、オフマイクを使ったミックスの考え方から、プリフェーダーセンド、位相、マスキングまで、中級者向けに詳しく解説します。

オフマイクを使うとミックスが変わる理由

Akashic DTM教室の講師、Gonのレコーディング風景

まず理解しておきたいのが「オンマイク」と「オフマイク」の違いです。

実際のレコーディングでは、楽器のすぐ近くにマイクを立てるだけではありません。

楽器から離れた場所にもマイクを設置し、部屋の反響や空気を含んだ音を録音することがあります。

この遠くに設置したマイクで収録した音が、一般的にオフマイクと呼ばれるものです。

例えばドラムなら、

  • キックやスネアの近くに立てたマイク
  • ドラムセット全体を拾うオーバーヘッド
  • 部屋の離れた場所に設置したルームマイク

などを組み合わせます。

近くのマイクは音の輪郭を明確にするのが得意です。

一方、遠くのマイクは部屋の響きや楽器同士の混ざり合いを含んだ音になります。

この2種類を混ぜることで、「目の前で鳴っている音」と「その音が部屋の中で鳴っている感覚」を同時に作ることができます。

打ち込みドラムにオフマイクを加えるメリット

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業スタジオ

バーチャルドラム音源は非常にリアルになっていますが、ミックスによっては「音源から直接音が出ている」ように感じることがあります。

特にドラムの各パーツを個別に処理していくと、

キック

スネア

タム

シンバル

というように、それぞれが独立した音として聴こえやすくなります。

実際のドラム録音では、同じ部屋の中で複数のマイクが同時に音を拾います。

そのため、楽器同士の間には自然な空間的なつながりがあります。

Sound City Studioなどを使ってオフマイク成分を追加すると、こうした「同じ空間で鳴っている」という感覚を人工的に作ることができます。

これは単純にリバーブを追加するのとは少し違います。

リバーブが「音に響きを加える」のに対して、オフマイクは「遠くからその演奏を録音したような音」を作るという考え方です。

Sound City Studioはリバーブとは少し違う

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業スタジオ

Sound City Studioには空間を再現する機能がありますが、通常のリバーブプラグインと全く同じものとして考えると、本来の使い方から離れてしまいます。

特に今回のようなリマイク的な使い方では、

「どこにマイクを置いて、何を録音しているのか」

という考え方が重要です。

例えばドラムに対して遠くにマイクを立てたと考えれば、そのマイクにはドラムそのものだけではなく、部屋の空気や他の楽器の音も入ってきます。

この考え方を持っておくと、Sound City Studioの設定も理解しやすくなります。

Sound City Studioの基本設定

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業スタジオ

ドラムにオフマイクを追加する場合、今回のようなバーチャルドラム音源では、基本的にクローズマイクを追加する必要はありません。

例えば、

  • Close Mic:OFF
  • Room Mic:ON
  • 内蔵EQ:OFF
  • 内蔵コンプレッサー:OFF

という考え方です。

なぜクローズマイクを切るのでしょうか。

バーチャルドラム音源には、すでに各ドラムのクローズマイクやオーバーヘッド、ルームなどの成分が含まれている場合があります。

そこへさらにSound City Studioのクローズマイクを加えると、近距離の音が二重になってしまいます。

その結果、

「音が太くなる」

のではなく、

「音が濁る」

方向へ進んでしまうことがあります。

そこでSound City Studioでは、主にルーム成分を追加するという考え方にします。

プリフェーダーセンドを使う理由

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業スタジオ

Sound City Studioをオフマイクとして使う場合、重要なのがプリフェーダーセンドです。

通常のポストフェーダーセンドでは、元のトラックで行ったフェーダーやEQ、コンプレッサーなどの処理の影響を受けてからSound City Studioへ信号が送られます。

しかし、実際のレコーディングで遠くに置いたマイクが拾っているのは、ミックス処理された音ではありません。

演奏そのものです。

そこでプリフェーダーを使います。

イメージとしては、

生のドラム音

├─ 通常のドラム処理

└─ Sound City Studio
  ↓
 ルームマイクとしての音

という分岐を作るわけです。

これによって、近接マイク用の処理とオフマイク用の処理を独立して考えることができます。

グループバスから送るより個別センドが有効な場合

Akashic DTM教室の講師、Kanzashiの作業スタジオ

ドラムを、

キック
スネア
タム

GPドラム

ドラムバス

という構成にしている場合、GPドラムからSound City Studioへ送ることもできます。

ただし、よりレコーディングに近い考え方をするなら、キック、スネア、タムなどから個別にプリセンドする方法もあります。

例えばスネアにEQをかけていたとしても、Sound City Studioへ送る信号は処理前のスネアです。

これは、

「EQで作ったスネアを部屋に響かせる」

のではなく、

「生のスネアを部屋で録音したらどう聴こえるか」

を再現するための考え方です。

オフマイクはパラレル処理で混ぜる

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業スタジオ

オフマイクの音は、元のドライ音と置き換える必要はありません。

むしろ、元の音を残したまま少量のオフマイクを追加する方法が扱いやすいでしょう。

これがパラレル処理です。

例えば、

ドライドラム

少量のオフマイク

立体感のあるドラム

という構造です。

最初からオフマイクを大きくすると、部屋鳴りが目立ちすぎてしまいます。

そのため、まずは低めのレベルから始め、少しずつ上げていきます。

今回のレッスンでは、フェーダーを-6dB付近からスタートして、全体を聴きながら調整する方法が使われました。

重要なのは、「オフマイクを聴かせる」のではなく、「オフマイクがあることで全体が自然に聴こえる」ポイントを探すことです。

位相を合わせると音圧感が変わる

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業スタジオ

オフマイクを追加するときには、位相にも注意が必要です。

遠くにマイクを置けば、音がマイクへ到達するまでの時間が変わります。

その結果、元の音とオフマイクの音が重なったときに、特定の周波数が強くなったり弱くなったりします。

Sound City StudioのAlign機能は、このような距離による位相差を補正するために利用できます。

Alignを有効にすると、音がタイトになり、音圧感が増す場合があります。

一方で、必ずしも位相を完全に揃えれば良いわけではありません。

例えば、

  • ポップス
  • タイトなバンドサウンド

では位相を揃える方向が使いやすいでしょう。

一方、

  • ルーズなロック
  • アンビエントなセクション
  • 広がりを重視したサウンド

では、あえて位相差を残すことで空間的な広がりを作ることもできます。

つまり、Alignは「必ずオンにする機能」ではなく、楽曲の方向性によって使い分ける機能です。

マスキングを「利用する」という考え方

Akashic DTM教室の講師、Gonのレコーディング機材

ミックスでは、一般的にマスキングは避けるべきものとして扱われます。

しかし、すべてのマスキングが悪いわけではありません。

重要なのは、

「どの音がどの帯域を占有するのか」

を意図的に考えることです。

例えば今回のように、

  • 50Hz以下:キック
  • 50〜100Hz:ベース
  • 180Hz付近まで:ギターを整理

というように帯域を整理すると、100〜180Hz付近に比較的余裕ができます。

そこへオフマイクの成分を加えることで、スペクトラムの空白を自然に埋めることができます。

これによって全体の密度が上がり、結果として音圧を上げやすくなる場合があります。

ここで重要なのは「マスキングさせれば音圧が上がる」という単純な話ではありません。

意図的に空いている帯域を埋め、全体のスペクトルを整えるという考え方です。

良いマスキングと悪いマスキング

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業スタジオ

マスキングには、大きく分けて2つの状態があります。

良いマスキング

ある楽器の音が別の楽器の音を完全に邪魔するのではなく、音楽全体としてスペクトラムを埋める状態です。

今回のオフマイクはその一例です。

悪いマスキング

同じ帯域に複数の重要な音が集中し、お互いの存在感を奪ってしまう状態です。

例えばボーカルとスネアの200Hz付近がぶつかり、スネアの胴鳴りが聴こえなくなるケースなどがあります。

したがって、

「マスキングをなくす」

ではなく、

「必要な音が聴こえる状態を維持しながら、意図的に重なりを利用する」

という考え方が重要です。

スネアの位相問題にも注意する

Akashic DTM教室の講師、Kanzashiの作業スタジオ

ドラムミックスでは、トップマイクとボトムマイクの位相関係も重要です。

今回のケースでは、スネアのトップとボトムの位相が大きくずれていたため、「パシャパシャ」としたような音になっていました。

これはスネアの胴鳴りが打ち消され、スナップ成分だけが目立っている状態です。

こうした問題は、単純にEQを操作するだけでは解決しにくい場合があります。

まず位相関係を確認しましょう。

波形を確認しながら、上下の波形ができるだけ同じ方向で重なる位置を探します。

位相を調整した後、それでもスネアの胴鳴りが不足する場合は、ドラムバスの200Hz付近を少し補正する方法もあります。

ただし、ボーカルが入ると200Hz付近はボーカルともぶつかりやすくなるため、ソロ状態だけで判断しないことが重要です。

ミックスは「足す」より「削る」

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業スタジオ

Sound City Studioを使ったレコーディングルーティンの面白いところは、音を追加した後に「引き算」のミックスがしやすくなることです。

オフマイクやコンソールエミュレーションによって、音に倍音や空間成分が加わります。

その状態から、

「何を足せばもっと派手になるか」

と考えるのではなく、

「何が邪魔をしているか」

を探します。

例えば、

  • 不要な低域をカットする
  • 過剰な中域を整理する
  • 音量を下げる
  • 不要なパートを抜く

といった処理です。

これは、いわゆる「引き算のミックス」という考え方です。

ミックスがうまくいかないときほど、プラグインを追加したくなります。

しかし、音の土台となる空間や倍音が整っているなら、必要なのは新しい処理ではなく、不要な成分を取り除くことかもしれません。

コンソールエミュレーションも統一する

Abbey Road TG Mastering ChainのFilter 部分

Sound City Studioと組み合わせてコンソールエミュレーションを使用する場合、全体の統一感も重要です。

例えば、

API系のコンソールを使うなら、

各トラック

各バス

マスター

まで、基本的に同じコンソール環境を通すという考え方です。

トラックごとにAPI、Neve、SSLなどをバラバラに使うと、それぞれの個性が強くなりすぎる場合があります。

もちろん、意図的に異なるキャラクターを使い分けること自体は悪くありません。

しかし、まずは一つのコンソールを全体に通してから、必要な部分だけ別のキャラクターを追加する方が、まとまりを作りやすくなります。

Cubaseでの基本的なルーティング例

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業スタジオ

今回の考え方をCubaseのルーティングに置き換えると、例えば次のようになります。

ドラム各トラック

GPドラム

ドラムバス

そして、並列で、

ドラム各トラック

プリセンド

Sound City Studio

ドラムバス

というルートを作ります。

つまり、Sound City Studioはドラムのメイン経路に直列で挿すのではなく、別のFXチャンネルとして並列に配置します。

この構造を理解しておくと、Sound City Studio以外のパラレルコンプレッションなどにも応用できます。

パラレル処理は「元の音を壊さない」のがポイント

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業スタジオ

パラレル処理の最大のメリットは、元の音を残したまま別の質感を追加できることです。

例えばドラムを強くコンプレッションすると、音は太くなる一方で、アタックや自然なダイナミクスが失われることがあります。

そこで、

元のドラム

強く処理したドラム

という2系統を作れば、元のアタックを残したまま密度だけを追加できます。

Sound City Studioのオフマイクも同じ考え方です。

元のドライ音を捨てるのではなく、

「元の音にはない成分だけを少量足す」

という発想で使うと、非常に扱いやすくなります。

まとめ:Sound City Studioをミックスに取り入れるときの考え方

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業スタジオ

Sound City Studioを使ったミックスで重要なのは、プラグインのプリセットを覚えることではありません。

重要なのは、実際のレコーディングで行われている「マイクで音を拾う」という考え方を、DAWの中で再現することです。

今回のポイントをまとめると、

  • オフマイクは部屋の空気感や楽器同士の一体感を加える
  • バーチャルドラムにはすでに近接マイク成分があるため、クローズマイクを重ねすぎない
  • オフマイクにはプリフェーダーセンドを使う
  • Sound City Studioはパラレル処理として使うと扱いやすい
  • Alignは音圧を優先する場合と空間を優先する場合で使い分ける
  • マスキングは「すべて排除する」のではなく、意図的に利用することもできる
  • 位相問題はEQより先に確認する
  • オフマイクやコンソールで音の土台を作った後は、引き算で整理する
  • パラレル処理では元の音を残し、必要な成分だけ追加する

特に中級者がミックスで伸び悩んだときは、「もっとEQをする」「もっとコンプレッサーをかける」という方向だけで考えないことが重要です。

実際のレコーディングでは、マイクの位置や部屋そのものが音作りの一部になっています。

その考え方をDAWの中に持ち込むことで、単に音を加工するだけでは作りにくい「同じ空間で演奏しているような一体感」を作ることができます。

お問い合わせ | Akashic DTM教室

Akashic DTM教室では無料体験レッスン、事前ヒアリングなど各種お問い合わせを受け付けております。
ボタンからお問い合わせページへアクセスの上、メールフォームまたは公式LINEアカウントへお問い合わせください。

お問い合わせ

関連記事一覧

目次