ミックスのやり方|EQ・コンプ・ゲインステージングの基本を解説

DTMオンラインレッスン, プロ志向のミキシング

DTMで楽曲制作をしていると、「音はそれぞれ良いはずなのに、完成したミックスを聴くと何となく聴きづらい」という問題に直面することがあります。

ミックスでは、各トラックを派手に加工することよりも、不要な音を整理し、それぞれの役割を明確にすることが重要です。

特に初心者のうちは、EQで音をブーストしたり、コンプレッサーを強くかけたりすることで音を良くしようとしがちです。しかし、ミックスの基本は「足し算」ではなく「引き算」です。

この記事では、実践的なミックスレッスンをもとに、EQ、コンプレッサー、フェーダー、ゲインステージング、ボーカル処理など、ミックスの基本的な考え方と具体的な方法を解説します。

ミックスの基本は「引き算」

ミックスで最初に覚えておきたいのが、「不要な帯域をカットしてから音量を上げる」という考え方です。

例えば、スネアの音に不要な低域が含まれているとします。

この状態でスネアを大きくしたいからといって、単純にフェーダーを上げると、必要のない低域まで一緒に大きくなります。

そこで、まずEQで不要な低域をカットします。

そのうえでフェーダーを上げると、スネアの必要な部分をより大きく聴かせることができます。

つまり、

「EQで不要な部分を減らす」

「フェーダーで必要な音量まで上げる」

という順番です。

EQでブーストすること自体が悪いわけではありません。しかし、初心者が最初からブーストを多用すると、どこをどれだけ持ち上げればよいのか判断する選択肢が増えすぎてしまいます。

まずは「不要なものを削る」という考え方を身につけることが、ミックス上達への近道です。

EQ・コンプ・フェーダーの役割を分ける

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業風景

ミックスで迷いやすいのが、「音量を調整したいときに、EQ・コンプレッサー・フェーダーのどれを使えばいいのか」という問題です。

基本的には、それぞれの役割を分けて考えます。

EQ

EQの基本的な役割は、不要な周波数帯域を整理することです。

例えばスネアに不要な低域が含まれている場合、その低域をカットすることでベースやキックが聴き取りやすくなります。

EQは「音量を大きくするための道具」と考えるよりも、「不要な音を整理する道具」と考えると扱いやすくなります。

コンプレッサー

コンプレッサーは、音量の変化を整えるために使用します。

特に重要なのが、「速すぎる音量変化」を処理することです。

例えばボーカルの一部だけ突然大きくなった場合、人間がフェーダーをリアルタイムで動かして完全に追従するのは困難です。

そこでコンプレッサーを使用して、瞬間的な音量差を均します。

フェーダー

フェーダーは、最終的な音量バランスを決めるための道具です。

EQで不要な帯域を整理し、コンプレッサーで速い音量変化を整えた後、フェーダーで「その音をミックスの中でどのくらい聴かせるか」を決定します。

この3つを混同しないことが重要です。

ミックスではセンターを先に作る

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業風景

ステレオミックスでは、すべての音を左右に広げれば良いわけではありません。

むしろ、最初に「真ん中」をしっかり作ることが重要です。

基本的には、

  • キック
  • ベース
  • スネア
  • ハイハット
  • リードボーカル

など、楽曲の中心となる音をセンター付近に配置します。

一方で、ギターやキーボードなどは左右に配置することで、センターの音とのスペースを作ることができます。

この考え方を意識すると、各楽器がそれぞれの場所に存在する、整理されたミックスを作りやすくなります。

センターを作る基本的な順番

最初は、

キック → ベース → スネア → ハイハット → リードボーカル

という順番でセンターを構築していくと分かりやすいでしょう。

もちろん、ジャンルや楽曲によって最適な配置は変わります。

ここで重要なのは、この順番そのものを絶対的なルールにすることではなく、「楽曲の中心となる音を先に決める」という考え方です。

スネアのミックス方法

Akashic DTM教室の機材写真

実際のドラム録音では、スネアをトップとボトムの2本のマイクで収録することがあります。

トップマイクはスネアのアタックや本体の音、ボトムマイクはスナッピーの響きを捉えることができます。

2本を組み合わせることで、より立体的なスネアを作ることができます。

トップとボトムの位相を確認する

2本のマイクを使用するときに注意したいのが位相です。

同じスネアを異なる位置から録音しているため、マイク同士の距離の違いによって波形のタイミングがずれることがあります。

このズレが大きい場合、低域が弱くなったり、スネアの音が細くなったりすることがあります。

位相調整用のプラグインを使用して、トップとボトムの波形を比較し、必要に応じて補正します。

ただし、「必ず位相を合わせれば音が良くなる」というわけではありません。

最終的には耳で確認し、補正前と補正後のどちらが楽曲に適しているかを判断することが重要です。

スネアのローカット

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業風景

スネアには、キックやベースに近い不要な低域が含まれている場合があります。

そこでEQを使ってローカットを行います。

今回の実践では、約89.5Hz付近をカットポイントの目安としました。

ただし、この数字をそのまま他のスネアに適用すればよいわけではありません。

重要なのは、低域を削っていきながら、スネアの「コン」というリム付近の音が失われない限界を探すことです。

不要な低域を整理すると、ベースなど低域を担当する楽器がより明確に聴こえるようになります。

ここでも、

カットする → フェーダーを上げる

という基本原則が役立ちます。

スネアバスにコンプレッサーを使う

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業風景

スネアには通常のヒットだけでなく、フィルなどで突然大きくなる音が含まれることがあります。

このような突出した音をそのままにすると、通常のスネアを十分な音量まで上げにくくなります。

そこでスネアバスにコンプレッサーを使用し、突出した音量を抑えます。

その後、フェーダーでスネア全体の音量を調整します。

コンプレッサーで「音を大きくする」のではなく、

コンプレッサーで音量差を整理する → フェーダーで全体の音量を決める

と考えると分かりやすくなります。

ボーカルのディエッサー処理

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ボーカルでは「サ行」などの歯擦音が強くなることがあります。

このような高域の鋭い音を抑えるために使用するのがディエッサーです。

ディエッサーは歯擦音だけでなく、発音時の「吹き付け音」が強く録音されている場合にも効果があります。

スプリットモードを基本にする

ディエッサーには複数の動作モードがあります。

今回の実践では、スプリットモードが最も汎用性の高い方法として扱われました。

スプリットモードでは、問題となる高域だけを動的に抑えるため、ボーカル全体の音色を変えすぎずに歯擦音を処理しやすくなります。

一方、ナローモードでは声の音程や声質によって効き方が変わりやすいため、まずはスプリットモードから試すと扱いやすいでしょう。

ダイナミックEQで耳障りな高域を処理する

Akashic DTM教室の機材写真

ボーカルの高域には、特定の発音をした瞬間だけ耳に刺さる音が発生することがあります。

このような場合、通常のEQで常時カットしてしまうと、ボーカル全体の抜けまで失われる可能性があります。

そこで便利なのがダイナミックEQです。

例えば6,780Hz付近に問題が集中している場合、その周波数をダイナミックEQで設定します。

そして、その帯域が一定以上の音量になった瞬間だけカットします。

つまり、

普段はカットしない

問題の音が出た瞬間だけカットする

という処理です。

これによって、ボーカルの明るさや抜けを維持しながら、耳障りな音だけを抑えることができます。

アタックを速く、リリースを短くする

今回の処理では、アタックをできるだけ速くし、リリースも短めに設定しました。

アタックを速くすることで、問題の音が発生した瞬間から反応させることができます。

一方、リリースを短くすると、問題の発音が終わった後に素早く元の状態へ戻ります。

今回の設定ではリリースを約39msとしました。

ただし、これも絶対的な数値ではありません。

録音素材によって適切な設定は変わるため、最終的には耳で確認します。

コンプレッサーとボーカルライダーの違い

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業風景

ボーカルの音量を均す場合、コンプレッサーだけですべてを処理しようとする必要はありません。

ここで便利なのがボーカルライダーです。

両者の役割を簡単に分けると、

コンプレッサー=速い音量変化を処理する

ボーカルライダー=緩やかな音量変化を処理する

という考え方ができます。

例えば、歌の一部分だけ瞬間的に大きくなる場合はコンプレッサーが有効です。

一方、Aメロ全体が小さく、サビに入って急に大きくなるような比較的ゆっくりした音量差は、ボーカルライダーによるフェーダー調整が適しています。

コンプレッサーだけで無理に均そうとすると、ボーカルが潰れすぎてしまうことがあります。

そのため、コンプレッサーとボーカルライダーで役割を分担することが重要です。

ゲインステージングとは?

プラグインを使用するときに重要になるのが、ゲインステージングです。

簡単に言えば、

各トラックを、プラグインが適切に動作しやすい音量へ揃える作業

です。

特にアナログ機器をモデルにしたプラグインでは、入力レベルによって音の変化が大きく変わることがあります。

そのため、プラグインへ送る信号の基準をある程度揃えておくと、設定を再現しやすくなります。

-18dBFSを基準にする理由

ゲインステージングでは、-18dBFSを基準として扱う方法があります。

これは、一般的なVUメーターの0VU付近に対応するデジタル上の基準として広く使われている考え方です。

今回のレッスンでは、無料のゲインステージング用プラグインを使い、平均レベルを-18dBFSに揃える方法を実践しました。

その後、ゲインツールで+15dB程度のゲインを加え、VUメーターが0付近を振る状態を作ります。

ただし、ここで重要なのは「すべての素材を必ず-18dBFSにしなければならない」ということではありません。

プラグインの仕様やメーターの種類によって適切な基準は異なります。

ゲインステージングの目的は、数字を揃えることそのものではなく、プラグインが想定する入力レベルを意識して、安定した状態でミックスすることです。

波形を直接編集せずゲインプラグインを使うメリット

音量を調整するだけなら、オーディオ波形そのものを編集する方法もあります。

しかし、ゲインプラグインを使っておけば、後から録音素材が差し替えられた場合でも対応しやすくなります。

例えばボーカルの録り直しが発生した場合、波形そのものを加工していたら、新しい素材に対して同じ作業をやり直す必要があります。

一方、ゲインステージングをプラグインとして行っていれば、差し替えた素材を再学習させるだけで済みます。

このように、ミックスでは「その場で音が良くなる方法」だけでなく、「後から修正しやすい方法」を選ぶことも重要です。

SSLコンソールやテープシミュレーターは必須ではない

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アナログコンソールやテープを再現したプラグインは、ミックスに独特の質感を加えることができます。

わずかな歪みやノイズ、音の霞みなどによって、デジタル処理だけでは得にくい質感を作ることができます。

しかし、これらはミックスの必須条件ではありません。

コンソールやテープを使わなければ良いミックスが作れない、ということではありません。

まずはEQ、コンプレッサー、フェーダー、パンニングなど、基本的なミックス技術を身につけることを優先しましょう。

ヘッドホンでもミックスはできる

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業スタジオ

ミックスでは「スピーカーがなければできない」と考える人もいます。

しかし、ヘッドホンでも十分にミックスすることができます。

密閉型と開放型のどちらを使用しても問題ありません。

開放型ヘッドホンは音の広がり方がスピーカーに近い傾向がありますが、最初から開放型にこだわる必要はありません。

重要なのは、自分が使っているモニター環境の特徴を理解することです。

ヘッドホンではL/Rを確認しやすい

特にパンニングを学ぶ段階では、ヘッドホンが便利です。

左右の定位が明確に分かるため、

「この音が右に寄りすぎていないか」

「センターの音がしっかり中央にあるか」

といった確認がしやすくなります。

スピーカーで正確な定位判断ができるようになるためにも、最初はヘッドホンで左右のバランスを意識することは有効です。

Waves NXのようなスタジオエミュレーター

スピーカーを大きな音で鳴らせない環境では、ヘッドホン用のスタジオエミュレーターを利用する方法もあります。

Waves NXのようなプラグインでは、ヘッドホン上でスピーカーから聴いているような定位感を再現できます。

住宅環境などの理由でモニタースピーカーを十分に使用できない場合には、選択肢の一つになります。

ただし、これも必須ではありません。

まずは通常のヘッドホンで、自分のミックスがどのように聴こえるかを理解することが大切です。

サウンドメイクとミキシングを分けて考える

ミックスを始めたばかりの段階では、「個性的な音を作らなければ」と考えてしまうことがあります。

しかし、ミキシングとサウンドメイクは別の作業です。

まずは、

「誰が聴いても各パートを認識できる」

「ボーカルが聴き取れる」

「低域が整理されている」

「左右のバランスが自然」

といった、基本的なミックスを作れるようになることが重要です。

その上で、必要に応じて特殊なサウンドや個性的な質感を加えていきます。

最初から特殊な音作りを目指すよりも、まず「普通に聴きやすいミックス」を作れるようになることが、結果的に表現力を高める近道になります。

まとめ:ミックスは「整理してから上げる」

Akashic DTM教室の代表、Ikumi Magataの作業風景

今回のミックスで最も重要な考え方は、「不要なものを整理してから必要な音を上げる」ということです。

EQで不要な帯域をカットし、コンプレッサーで速い音量変化を整え、必要に応じてボーカルライダーで緩やかな音量変化を調整します。

そして最後にフェーダーで、各音をミックスの中の適切な位置へ配置します。

基本を整理すると、

  • EQは不要な帯域を整理する
  • コンプレッサーは速い音量変化を均す
  • ボーカルライダーは緩やかな音量変化を均す
  • フェーダーは最終的な音量バランスを決める
  • ゲインステージングでプラグインへの入力レベルを整える
  • キック、ベース、スネア、ハイハット、ボーカルを中心にセンターを構築する
  • 必要以上にEQでブーストしない
  • 特殊なサウンドメイクより先に、基本的なミックスを身につける

という考え方になります。

ミックスは、プラグインをたくさん挿せば良くなるものではありません。

むしろ、不要な音を減らし、それぞれの処理の役割を明確にしていくことで、少ない処理でも各パートが自然に聴こえるようになります。

まずは「足す」前に「削る」。

そして、削った分だけフェーダーで必要な音を前に出す。

この考え方を身につけることが、ミックスを上達させるための基本になります。

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