LUNA Proで行うマスタリングのやり方|API VisionとTG Mastering Chain活用術
「音圧競争」から「質感重視」へ

マスタリングというと、
- Ozoneで音圧を上げる
- L1 Limiterで潰す
- LUFSを基準値まで持ち上げる
という手順を思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし近年は、単純な音圧競争ではなく、
「アナログ機材を通したような質感」
を重視するエンジニアも増えています。
特にUniversal AudioのLUNA Proには、
- API Vision
- API Summing
- Master Tape
- TG Mastering Chain
といったアナログエミュレーション機能が搭載されており、デジタルマスタリングとは異なるアプローチが可能です。
今回は、Akashic DTM教室の講師であり、300曲以上のミックス・マスタリング経験を持つ
Ikumi Magata(Akashic DTM教室)
が実際のレッスン内容をもとに、
LUNA Proで行うアナログマスタリングのやり方
を解説します。
LUNA Proのマスタリングチェーン

今回のレッスンで使用したチェーンは非常にシンプルです。
1. API Vision
↓
2. TG Mastering Chain
↓
3. L1 Limiter
一般的なマスタリングで多用される
- Ozone Maximizer
- Infected Mushroom Pusher
などは使用せず、
コンソールとテープによる質感作りを優先
しています。
マスタリング前のヘッドルームを確保する

まず重要なのがプレマスターのレベルです。
アナログエミュレーションを使用する場合、
入力レベルが高すぎると簡単に歪みます。
そのため、
推奨ヘッドルーム
- ピーク:-7dB前後
程度の余裕を持たせておきます。
テープサチュレーションやコンソールドライブを加えると音量が大きくなるため、最終的にはフェーダーを下げながら調整することになります。
API Visionでコンソール感を加える

API Visionとは?
API Visionはチャンネルストリップ型プラグインです。
本来は
- EQ
- コンプレッサー
- ゲート
- フィルター
などを搭載しています。
しかし今回のマスタリングでは、
ほぼインプットだけを使用
しています。
なぜなら、
API Visionの魅力はEQではなく
「入力を上げた時のコンソールドライブ感」
にあるからです。
入力レベルを少し上げるだけでも、
- 音の密度
- 中域の存在感
- アナログらしいまとまり
が得られます。
TG Mastering Chainで音を整える

次に使用するのが
TG Mastering Chain
です。
Abbey Roadの名機を再現したマスタリング用チャンネルストリップで、
- EQ
- リミッター
- フィルター
を一括で処理できます。
362Hzを軽くカットして濁りを取る

レッスンでは特に
362Hz
を中心に
- 1.5dB程度
カットする処理を行いました。
この帯域には、
- ギターの密集感
- シャウトボーカルの濁り
- ミックス全体のモコつき
が集まりやすいためです。
362Hzの特徴
- ラウドに感じやすい
- 少し騒がしい印象になる
256Hzの特徴
- スッキリする
- ラウド感は少し下がる
楽曲によって使い分けると良いでしょう。
高域は欲張らない

マスタリング初心者がやりがちな失敗が、
高域の上げすぎです。
TG Mastering Chainでは10kHz付近をブーストできますが、
目安
+1〜2dB程度
に留めるのがおすすめです。
特にシングルコイルギターが多い楽曲では、
むしろ10kHz付近を少し抑えた方が聴きやすくなるケースもあります。
TG Mastering Chainのリミッター設定

TG Mastering Chainには独自のリミッターが搭載されています。
重要なのは
Recovery
パラメータです。
Recoveryが低い場合
- 圧縮後の戻りが遅い
- スカスカした印象
- 元気がなく聞こえる
Recoveryが高い場合
- 圧縮後すぐに音圧が戻る
- ライブ感が出る
- エネルギッシュ
おすすめ設定
まずは
Recovery = 3
前後から始めるとバランスが取りやすいでしょう。
静かな部分と激しい部分を行き来しながら調整すると違いが分かりやすくなります。
フィルター設定の考え方

ハイパス
おすすめは
40Hz
です。
63Hzまで上げると低域が痩せる場合があります。
ローパス
15kHz〜20kHz
を目安にします。
特に
- 歪みがきつい
- シンバルが刺さる
- サ行が耳につく
という場合は15kHzが有効です。
TGのフィルターは急峻ではなく、なだらかに効くため自然な仕上がりになります。
Master Tapeでアナログ感を追加する

LUNA Pro最大の特徴の一つが
Master Tape
です。
テープを通すことで、
得られる効果
- 音に厚みが出る
- 奥行きが増す
- 歪み方が自然になる
- アナログらしい質感になる
という変化が得られます。
ただし、
注意点
サチュレーション量を増やしすぎると簡単に割れます。
テープを追加した瞬間に音量も上がるため、
必ず出力レベルを確認しましょう。
API Summingは本当に効果があるのか?

LUNA Proユーザーが最も気になる機能の一つが
API Summing
でしょう。
実際にオン・オフを比較すると、
- サ行が自然になる
- 歪みの立体感が増える
- 音像が少し前に出る
といった変化を感じられます。
劇的な変化ではありませんが、
積み重なると確かに違いがあります。
最後はL1 Limiterで仕上げる

アナログ感を作った後は、
L1 Limiterで最終調整を行います。
目安としては、
ラウドネス
- 11LUFS前後
シーリング
- 2dB
程度からスタートすると扱いやすいでしょう。
ここで無理に音圧を上げるよりも、
アナログ処理で得られた質感を残すことを優先します。
LUNA Proは導入する価値があるのか?

結論として、
LUNA Proがなくてもマスタリングはできます。
実際、
- API Vision
- テープ
- チャンネルストリップ
は他社プラグインでも代用可能です。
しかし、
LUNA Proならではの強み
- API Summing
- コンソール一体型ワークフロー
- テープとの統合
- ミックスからマスターまで同じ思想で作業できる
というメリットがあります。
「デジタル臭さを減らしたい」
「コンソールライクな制作が好き」
という方には十分魅力的な選択肢と言えるでしょう。
まとめ

LUNA Proでのアナログマスタリングは、
単純な音圧アップではなく、
質感を積み重ねる発想
が重要です。
今回紹介した流れをまとめると、
- ヘッドルームを-7dB程度確保
- API Visionでドライブ感を追加
- TG Mastering Chainで中域整理
- Recoveryを調整して密度感を作る
- Master Tapeでアナログ感を追加
- API Summingで立体感を得る
- L1 Limiterで最終音圧を整える
という流れになります。
デジタルマスタリングとは異なる質感を目指したい方は、ぜひ試してみてください。
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講師:Ikumi Magata(Akashic DTM教室)

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