ボーカルを太くする方法|プロが使う「並列処理(パラレル処理)」を解説
ボーカルが細い原因は“音量”ではない

プロが使う「並列処理(パラレル処理)」の基本を解説

「EQで低音を足しても、なぜか声が細い」
「コンプを強くかけると潰れるだけ」
「音圧を上げても、プロみたいな“前に出る声”にならない」
DTMを始めたばかりの頃、多くの人がここで悩みます。
実は、プロのボーカルミックスでは
“元の声をそのまま加工する”だけではなく、
別の人格の声を並行して作る
という考え方を使います。
それが、
並列処理(パラレル処理)
です。
今回は実際のレッスン内容をベースに、
- なぜ並列処理で声が太くなるのか
- プロはどんなルーティングをしているのか
- 「ハスキー声」「太い声」はどう作るのか
- YouTube向けマスタリングまでどう繋がるのか
を、MIX師志望向けに解説します。
並列処理とは?

並列処理とは、
元のボーカルとは別に、極端に加工した音を作り、必要な量だけ混ぜる技術
です。
例えば、
- ハスキー感だけを強調した声
- 超高域だけを強調した声
- 極端に潰した声
- 歪ませた声
- 前に飛び出す声
などを別トラックとして作り、
あとから混ぜます。
つまり、
「1本の声」で戦わない
という考え方です。
初心者がやりがちなミス

初心者は、
- EQで低音を足す
- コンプレッサーを強くかける
- Saturationを挿す
- 音量を上げる
だけで太さを作ろうとしがちです。
しかしこれだけだと、
- 抜けない
- 潰れる
- ノイズっぽい
- 奥に引っ込む
という状態になりやすいです。
なぜなら、
「太さ」と「明瞭さ」は別物
だからです。
プロは、
- 元の声 → 明瞭さ担当
- 並列処理 → 質感担当
として分離しています。
プロが使う「プリフェーダーセンド」

ここがかなり重要です。
通常のセンド(青色)は、(Studio One, Fender Studio Proの場合)
フェーダーやEQ・コンプを通った後の音
を送ります。
しかし並列処理では、
プリフェーダーセンド(オレンジ色)
を使います。
これは、
元トラックの処理前の“生の声”
を送る方式です。
つまり、
- 元ボーカルでコンプしていても
- 元ボーカルをミュートしても
- 元ボーカルの音量を変えても
並列トラック側は独立して動きます。
これによって、
“別人格の声”を作れる
わけです。
実際の並列処理①

「ハスキーボイス」を作る方法

今回のレッスンでは、
Pararell 1
という並列トラックを作成。
そこに対して、
- 超高域(10kHz以上)
- 息成分
- 「い」の母音
を強調しました。
なぜ「い」の母音なのか?

日本語の中で、
「い」
は最も耳に刺さりやすい母音だからです。
例えば、
- 痛い
- 消えない
- 君に
- Cry
- Believe
など。
J-POPでは、
この帯域を少し強調するだけで
“別人格の声”を作れる
ことがあります。
オートメーションは「ラッチ」を使う

ここもかなり実践的です。
並列トラックは常時鳴らすのではなく、
必要な瞬間だけ上げる
のが重要です。
そのため、
Studio Oneでは
オートメーションモード → ラッチ
を使用。
歌いながらフェーダーを動かし、
- 語尾
- 「い」の母音
- 感情的な箇所
だけを持ち上げます。
太い声を作る方法

Infected Mushroom Pusher の使い方
次に使用したのが、
Infected Mushroom Pusher
です。
これは実質、
- マルチバンドコンプ
- サチュレーション
- ステレオ処理
- マキシマイザー
が合体したようなプラグインです。
設定のコツ

初心者がやりがちなのは、
ノブを回しすぎる
ことです。
今回のレッスンでは、
まず
Push を 0.1
に設定。
その後、
- High
- Low
- Magic
- Focus
- Dynamic Punch
を、
「音が変わり始めるギリギリ手前」
で止めています。
これはかなり重要です。
プロのミックスは、
“効いてるか分からないくらい”
で止まっていることが多いです。
ボーカルを前に出す方法

今回のレッスンでは、
歪んだ音ほど近く感じる
という性質も利用しています。
これは非常に重要です。
例えば、
- Softube Saturation
- Pusher
- 軽い歪み
を加えると、
人間はその音を
“近い”
と感じやすくなります。
逆に、
- リバーブが多い
- 高域が少ない
- 丸い音
は遠く感じます。
つまり、
「前に出す」はEQだけではない
ということです。
ハモリにリバーブをかけない理由

初心者はハモリにリバーブを大量にかけがちです。
しかし今回のレッスンでは、
ハモリにリバーブは不要
という考え方を採用しています。
理由は単純で、
主旋律がボヤけるから
です。
代わりに、
- LA-2Aで強く潰す
- 左右に振る
- EQで少しだけ差をつける
- S1で広げる
ことで、
“薄いのに広い”
ハモリを作っています。

プロが見ている帯域

今回かなり重要だったのが、
510Hz〜2.5kHz
です。
ここは、
人間の耳が最も聞き取りやすい帯域
です。
そのため、
- ボーカル側 → 少しブースト
- オケ側 → 少しカット
を行います。
すると、
音量を上げなくても前に出る
ようになります。
マスタリングの考え方

今回のレッスンでは、
YouTube向けのラウドネス調整も行いました。
一般的には、
- -14 LUFS
が推奨されています。
しかし実際には、
-11 LUFS前後
を狙うケースも多いです。
理由は、
- 小さすぎると迫力が消える
- 多少大きめでもYouTube側で極端に下げられにくい
からです。
ヘッドルームは最初に作る

マスタリング前には、
6dB程度のヘッドルーム
を確保します。
その状態で、
- SSL Bus Comp
- Infected Mushroom Pusher
- L4 Maximizer
を使用していきます。
ここで重要なのは、
「最初から音圧を上げない」
ことです。
初心者はミックス段階で音量を上げすぎます。
すると、
- マスタリングで潰れる
- 抜けなくなる
- 歪む
原因になります。
プロは「ルーティング」を設計している

今回のレッスンで最も重要なのはここかもしれません。
プロは、
“音”ではなく“構造”を作っています。
例えば今回の構成。
- ボーカル → Vocal Bus
- ハモリ → Chorus Bus
- 並列処理 → Vocal Bus
- リバーブ → Master Bus
- 最終的に Main
という階層構造になっています。
つまり、
後から全体をコントロールしやすい
ように設計されています。
これが、
「なんとなくプラグインを挿しているだけ」
との最大の違いです。
まとめ

並列処理は、
単に「音を太くする技術」ではありません。
- 別人格の声を作る
- 必要な瞬間だけ出す
- 前後感を操作する
- 感情を強調する
- 主旋律を邪魔せず厚みを出す
ための技術です。
特に、
- 歌ってみた
- J-POP
- ロック
- ボカロ
- バンドサウンド
では非常に重要です。
「EQしてるのにプロっぽくならない」
と感じている場合、
問題はEQではなく、
“並列処理の発想”
かもしれません。
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